産業医の立場で考える復職

本日は大手化学メーカー勤務の産業医の先生に、パニック障害を含めた「メンタルヘルス不調の治療や復職」に関してインタビューをしてきました。

 自身の経験として早期回復には、特に以下3点が大事だと感じました。

  • 病気について幅広く、正確な情報を持つこと
  • 自身の体の状態を把握し、状態に応じて段階的に治療や回復に向けた準備に取組むこと
  • 早期にしっかり休むこと(焦燥感で行動することで、かえって体調の悪化をまねく)

個別企業の情報も含まれますが、インタビュー内容を記載します。

 

医者としての見解

治療方法

薬物療法はどういう効果がありますか?

症状を抑え、状態を安定させる効果があります。復職に向けて、症状を安定させた上で治療を進めていく必要があります。状態が安定しないまま治療を続けると、回復までの期間が長期化する傾向があります。

 

薬物療法以外に効果的な治療法にはどういったものがありますか?

認知行動療法などの心理療法があり、医療機関や職業訓練センターなどが運営するリワーク施設にカウンセラーがいて治療を受けることができます。

 

・リワーク施設はどういった場所ですか?

復職や再就職に向けた生活リズムの調整や業務に必要な能力の回復、再発防止支援を行っています。日常生活がおくれる状態になった人が、仕事復帰できる状態を目指す上で必要な支援を行います。

リワーク施設は馴染みがないかもしれませんが、復職前にリワーク施設の利用を義務付けている大手企業も存在します。

 

・「日常生活がおくれる状態」=「復職できる状態」ではないんですか?

日常生活と比べると職場はストレスが多いので、弱ったストレス耐性を強化する必要があります。

 

生活習慣

・積極的に取組んだ方がいいことはありますか?

規則正しい生活をおくることです。早寝早起きが大事ですが、先ずは早起きを心掛け、就寝時間に関わらず朝起きる時間を一定にすることからはじめると良いです。

ジョギングなどの運動は、脳内が活性化されてストレスへの反応を抑えられる効果があります。また脳の活性化には朝の運動が効果的です。

 

・反対に避けた方がいいことはありますか?

焦らないことです。症状により焦燥感にかられて行動の制御が難しくなりますが、焦って行動をすることで症状の悪化を招きます。先ずは療養に専念し、段階的に復職に向けた準備を行う必要があります。

 

産業医として関わった患者について

発症前の予兆について

・患者は発症前の症状や原因について自覚をしている人が多いですか?

自覚症状がないケースが大半です。恐らく発症前に、ミスが多くなったり集中力が続かなかったりと異変があるはずですが、それがメンタルヘルスの悪化だとは気付かないことが多いようです。

発症後の対応

産業医に相談をして、休職以外(業務を継続等)の対応をしている社員はいますか?

原則はすぐに休んでもらいます。早期回復には、不調を感じたら早く休むことが一番です。

・休職中の社員とはどういった関わり方をしますか?

「療養専念期」「復職準備期」「就業制限有の勤務」「就業制限無しの勤務」と社員の状態に応じてコンタクトを取ります。

元の職場への復職を第一に目指すため、産業医だけでなく元の上司とのコンタクトも段階的に取り組んでいきます。

 

回復・復職

・復職時は元の職場に戻るケースが多いですか。

原則元の職場への復帰を進めます。環境の変化はストレスとなり調子を崩す恐れがあるため、復職時は環境の変化が少ない元の職場が望ましいです。

但し、特定の上司や同僚との人間関係がストレス等要因が特定される場合は、他の職場での復職をすすめることがあります。

 

・復職前より業務負担が軽い職場での復帰は望ましくないですか?

復帰後に「本人がどのレベルで仕事に取組んでいきたいか」また「職場がどのレベルのパフォーマンスを求めるか」によりますが、極端に業務量が少なくなると、その環境に慣れてしまいストレス耐性が更に弱くなることがあります。

 

その他休職制度など

・最大取得可能な休職期間は?

27ヶ月~33ヶ月です。

 

・休職期間中の手当と支給期間は?

2年間、休職前の給与の8割程度を支給(内訳は、傷病手当が6割と健康保険組合からの手当が2割)またボーナスに相当する手当もあります。

 

以上となります。

次回こそ、パニック障害を克服した方のインタビューを掲載します。

それでは。