「家族力」がうつから救う!-ともに戦う「患者と家族」60のケース-

今回はうつ病の患者を支えるご家族に役立つ書籍、【「家族力」がうつから救う!山口律子(宝島社文庫)】を紹介させて頂きます。

著者は「うつ・気分障害の当事者と家族の支援活動」の専門家で、‟ケアする家族”が必要とする情報やノウハウを実際の体験談を踏まえながら紹介されています。紹介されている知恵やアイデア、心構えは実践的で知っておくと気持ちが楽になれると思います。

僕は‟元患者”という立場で読みましたが、患者の症状について本当にリアルに書かれていて、「家族や知人にこんな風に接してもらえたら嬉しいな。」という内容が盛りだくさんでした。

著者略歴

著者の山口律子さんは、うつ・気分障害の当事者と家族の支援活動を行うNPO法人「MDA-JAPAN」の代表。かつては、東京都内の保健所で保健師として、精神障害気分障害に苦しむ患者や家族のサポートをされていたそうです。

 

本の内容

全体は5章で構成されていて、各章ごとに関係する情報と「うつ家族体験」が掲載されています。以下に各章の見出しと、僕が特に参考になったと思う情報を一例として本文をそのまま紹介します。

 

第1章 よくある「うつ家族」の誤解

○気晴らしに誘う

“「たまには飲みに行くか」とか「気分転換に旅行にでも行こうか」などと気晴らしに誘いたくなります。しかし、これは、往々にして逆効果になります。”

“本人は明るくしようにも明るくふるまえません。まるで悪い魔法にかかったかのうように、意欲が出ず、体が動かないのです。自分だけ一人沈んだ存在になっていることを悟り、逆に気分が落ち込むだけです。”

叱咤や激励は逆効果ですが、対話はときに効果的です。家族や友人はプロのカウンセラーではないので、基本的に傾聴するのがベターでしょう。批判せずに、話を聞くことに徹するのです。

 

第2章 「うつ家族」の心構え

うつ病三寒四温で回復する

うつ病は、春先の三寒四温のように、すこしずつ回復していきます。暖かい日と寒いを繰り返しながら、やがて暖かい日の方が多くなり、やがで花が咲きだす季節になるのです。”

うつ病はらせん階段をゆっくり昇るように回復する。何度も同じ風景を見ている気がして、患者も家族も回復の遅さにいらだつことがある、少しずつ回復に向かっていると信じて、あせらないことが大事。”

○自己犠牲は厳禁

 “家族は、早く治そうと、つい献身的になりすぎてしまいがちです。結論から言います。うつ病は、家族の自己犠牲では回復しません。”

“一日二十四時間、自分の人生を投げ出してケアしても、うつ病の場合は回復が早くなるわけではありません。”

支えるのに大変さを感じたら、誰かの助けを借りるべきでしょうたしかに、相手のために尽くす時間も必要ですが、家族自身もしっかりと自分の時間を大切にした生き方をしないと、うつ病のケアは続きません。共依存」ではなく、「共に支え合う」という関係性が大切です

 

第3章 「うつ家族」が抱えやすい課題

○家族が社会から孤立する

うつ病のケアは、一人で抱えるには負担が大きすぎます。周囲や専門職に協力を求めましょう。家族やケアギバー(身のまわりの世話をする人)の心身の負担を軽減することが良い関係を保つ秘訣です。

“例えば、保健所や精神保健センターは、誰でも無料で利用できる相談機関です。精神科医の相談日(予約制)もありますし、地区担当の保健師精神保健福祉士の家庭訪問も利用できます。精神科の訪問看護を行っているナースステーションもあります。”

 

第4章 今すぐ役立つ!「うつ家族」の改善アイデア20

○「暖かな無関心」で接する

“過干渉になると、たいてい症状は悪化します。患者さんは、ほどよい心の距離、ほどよい感情の交流が大切なのです。つかず離れず。ちょっと離れているけど、しっかり見守っている。”

無関心でいるのは、患者さんのためだけではなく、自分が疲れはてないためでもあるのです。ケアにのめり込みすぎないための心の持ちようでもあります。

○重大な決断は、すべてあと回し

会社をやめたい、離婚したい、実家に帰りたい、そのほうが早く回復するはず・・・・など訴えるのは、うつ病患者さんの典型的な言動です。傾聴することは大切ですが、真に受ける必要はありません

「すっかり元気になってから考えよう。それから検討してもぜんぜん遅くない」などと保留にしてください。家族が肝に銘じておくことは、重大な決定はすべてあと回しにするということです。

 

第5章 社会復帰へ。「うつ家族の一歩」

 ○再発しても、家族は絶対あきらめない!

“一度うつになったら、「もう、うつ病にならない」と思うのではなく、「完治しないうつ病でも、乗りこなせば怖くない」と思うようにしましょう。うつ病を「やっかいな病気」から「コントロール可能な病気」に格下げしましょう。

家族が見極めなければならないのは、前兆のサインです。再発するきっかけが違ってもサインはだいたい同じです。しかし、患者さんは再発だとはきづきません。うすうす感づいても自己否定するケースが多いからです。再発のサインを見つけられるのは、家族だけなのです。

 

 感想

同じうつ病に関する情報といっても、「患者」と「家族」では必要な知識や情報が違うのだと改めて感じました。既存の情報メディアでは、情報提供の対象が「患者及びその家族」となっているケースが大半ですので、僕は本書のように「家族」向けに特化した情報提供を行っていきたいと思います。

また、第3章で書かれているように家族が孤立しないように社会にある相談機関を利用することはとても重要だと思いますが、「家族が相談機関の存在を認知していない。」や「相談機関側の情報が不足しており、家族が利用する上でのハードルとなっている。」のではないか感じました。

この辺りは直接取材を行いながら、「どんな人がどういった内容の相談にのってくれるか。」や「利用時間、場所、相談方法」などについて紹介していきたいと思います。

 

今回は以上となります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。